NEDO Technology Commercialization Program（TCP）は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）主催の、技術を基に起業して事業を大きく拡大させたいと考えている起業家、起業家予備群、起業意識のある研究者等を支援するためのプログラムです。
　北岸教授は20年以上にわたり、合成ヘムモデル化合物（hemoCD）の研究を行ってきました。その研究の過程で開発されたhemoCD-Twins（2種類のhemoCD化合物）は、火災での死因一位のガス中毒の原因物質である一酸化炭素（CO）とシアン化水素（HCN）を同時に速やかに解毒可能な特性を持つ世界で唯一のものです。現在、火災ガス中毒に対して現場や救急搬送中での治療法はなく、北岸教授は救急時において早期の治療が開始でき、救命が可能となるhemoCD-Twins治療薬の実現を目指しています。
　北岸教授率いるチーム「heme Therapeutics（ヘムセラピューティクス）」は、まずはCO中毒治療薬としての社会実装を目指し、TCPへチャレンジしました。一次審査（書類）を通過後、昨年12月にピッチ形式で行われた二次審査では28チームからファイナリストの9チームに選ばれました。
　2月1日に開催された最終審査会で北岸教授は「救急現場での一酸化炭素中毒治療を可能とする解毒剤『hemoCD』」と題し、CO中毒治療薬の実用化に向けた想いを熱く語りました。
　その熱意や、実用化までの課題認識、ロードマップの具体性、実用化後の社会貢献の大きさなどが審査委員だけでなくオーディエンスからも評価され、最優秀賞を始め、認定VC賞・オーディエンス賞も含めた三冠を獲得しました。
　TCPを通じて実用化への期待が大きいことを再認識した北岸教授は、hemoCD-Twinsが火災などの救急現場で活用され、多くの人の命を救う日を目指し、確実に研究開発を進めています。