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分子化学工学研究室

教員

塩井 章久(教授)Akihisa SHIOI

DB

研究分野 非平衡化学システム
研究室 SC-226
TEL 0774-65-6839
FAX 0774-65-6803
研究室のHP http://www1.doshisha.ac.jp/~molcheng/
E-mail ashioi@mail.doshisha.ac.jp

山本 大吾(准教授)Daigo YAMAMOTO

DB

研究分野 コロイドおよび界面化学
研究室 SC-224
TEL 0774-65-6564
FAX 0774-65-6803
研究室のHP http://www1.doshisha.ac.jp/~molcheng/index.html
E-mail dyamamot@mail.doshisha.ac.jp
分子化学工学研究室web siteへ

研究内容

生物は、環境に対応した運動を自発的に発生し、そのためのエネルギーを、外部環境から得た物質を用いた化学反応を通じて取得している。さらに、そのような機能を発現するために、空間的に秩序の高い組織構造を、自発的に獲得する能力をもつ。このような環境に対応して自発的に変動していく「柔軟な」化学システムは、全て物理化学の法則に支配されて機能しており、人工系(非生物系)においても、このような化学システムを設計することが可能であると予想される。この予想が実現すれば、外部にある物質を取り込んで、それに伴う化学反応によってエネルギーを獲得し、特定の目的に従う自発的な運動を行う、人工化学システムを構築することが可能となり、既存の常識を越えた新しい発想を科学技術に持ち込むことができると考えられる。将来的には、溶液や高分子系で構成された化学ロボットや、自ら運動しながら特定物質の吸収・分解を行う溶液、あるいは、単純な1段階の過程で複雑な構造をもった材料を形成するプロセスの設計などにつながると考えられる。当研究室では、油水界面やゲル中での反応拡散過程、ならびに、非平衡下での界面活性剤分子集団の性質などを用いて、上記の目的を実現するための基礎研究を進めている。

反応・拡散過程が生む界面の自発秩序運動

界面や表面で発生する張力の不均一性が、巨視的な運動を発生する現象は、マランゴニ効果として古くから知られている。このとき、界面での化学反応や吸・脱着速度の性質を通じて、発生する張力の不均一性を制御することができれば、結果として、巨視的運動は特定の秩序や化学物質に対する感受性をもつことになる。具体的には、特定の性質を持った固体面に沿ってのみ秩序運動を発生したり、溶液中の特定のイオンなどに反応して秩序運動を発生する場合、さらには、運動する溶液同士が、化学物質の交換に基づくコミュニケーションを行うことで、集団的な秩序運動が発生する場合、など、数々の運動様式が存在することが、わかっている。本研究では、研究対象として、

  1. 外界にある物質との化学反応を、秩序だった運動エネルギーに変換する化学システムのデザイン
  2. 化学反応や吸・脱着速度の制御により、界面張力の不均一性の発生を制御するための原理
  3. 界面張力不均一性と流体運動との相互作用による対流パターン
  4. 複数の溶液間での化学物質の交換(ケミカルコミュニケーション)に基づく、集団的秩序運動発生の様式と原理

等についての研究を進めている。

さらに、この研究の発展として、生体機能に学ぶ新しい分離システムについての基礎研究を行っている。上に記述した界面での自発対流を利用すれば、化学反応によって生み出された運動エネルギーを用いて、特定の化学物質を、一時的に化学ポテンシャルの低い溶液内から高い溶液に“能動輸送”することが可能になると予想される。生物では、ATP分子の分解に際して放出されるエネルギーを利用して、細胞膜内外での物質の能動輸送を実現しているが、物理的枠組みとしては類似のことが、人工系でも実現できると予想される。これまで、特定化学物質を、濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に濃縮する研究は盛んに行われてきたが、化学ポテンシャルの勾配に逆らった能動輸送の人工的実現は、ほとんど知られていない。当研究室では、このような能動輸送系の構築と、それを利用した物質分離の研究を進めている。

反応拡散機構による構造性微粒子の作製

対流を抑制した媒体中で、化学物質の拡散と反応によって形成される固体物質は、拡散律速下で成長するため、熱的に安定な結晶構造や巨視的粒子形状をとらない場合がある。その代表的な例は、ゲル中で形成された粒子群が、秩序だった巨視的ストライプを描くLiesegang現象や、固溶体粒子内で化学組成分布にマイクロメートルオーダーの秩序だったパターンが現れるoscillatory zoning現象などである。本研究では、構造性の無機材料形成プロセスとしての反応拡散系がもつ可能性を探求するとともに、その構造形成原理を解明し、より有用な構造性微粒子・材料の設計を行うことを目指している。このような製造法は、有機溶媒や界面活性剤を用いる必要のない環境調和型のものであり、微細な構造をもつ粒子などが1段階過程で形成されるという特徴をもっている。

非平衡下での分子集合体および微粒子の自発秩序運動

巨大ベシクルやエマルションといった比較的大きな分子集合体や微粒子は、その運動状態を直接観察することが可能である。とくに、ベシクルは、界面活性剤の2分子膜が、微小親水空間を形成したものであって、その構造が細胞に類似している部分があるため、生体関連工学の研究では、しばしば利用されている。もし、ベシクルが、外部から取り入れた化学物質に基づくベクトル的な運動を発生するならば、それは、あたかも単細胞生物の化学走性(単細胞生物が化学物質の濃度勾配に沿って自発的に運動する現象)に例えることも可能であろう。本研究では、このような“環境に対応して動く分子集団(や微粒子)”について、研究を進めている。この研究は、特定の化学物質をベシクル内に内包して、化学環境などに基づいて選択された経路に沿って特定の場所に送達する技術や、自ら必要な場所に移動する機能性微粒子の開発などにつながる可能性を有している。