伝熱工学研究室

教員

稲岡 恭二(教授)Kyoji INAOKA

DB

研究分野熱と流れの動的制御、熱交換器の高性能化
研究室YM426
TEL0774-65-6463
FAX0774-65-6802
E-mailkinaoka@mail.doshisha.ac.jp

原 峻平(助教)Shumpei HARA

DB

研究分野微小の攪乱・物質の添加による伝熱流動の改変
研究室YM-323
TEL0774-65-6832
E-mailshhara@mail.doshisha.ac.jp

研究内容

熱の移動、すなわち伝熱現象には、熱伝導、対流熱伝達、熱放射の3つの形態がある。この中で、対流熱伝達は空気や水などの流れとともに熱が移動する現象であるから、その特性を理解するには、流体の運動を知ることが必要である。流れに不規則な成分を持たない層流は、比較的小型の伝熱機器や低速流れにおいて認められ、熱の輸送が分子拡散、すなわち熱伝導のみによって行われるため、その基礎伝熱特性を十分に把握すること、さらに、熱輸送を増大させる方法を提案することが極めて重要である。また、不規則乱れ成分を持つ乱流は、工学上の多くの流れで認められ、層流での分子拡散のほかに、不規則に生成・消滅する渦によっても運動量、熱、物質の輸送が行われる。その結果、乱流の熱伝達は層流の熱伝達と比較して極めて良好である。この乱流の輸送機構を調べることは、乱流の基礎研究として重要である上に、乱流場を人為的に制御するためには必須となる。
本研究室では、層流・乱流において生じる様々な熱流動現象を理解し、その工学的応用を図ることを目的としている。具体的には、工学上重要かつ要素的な種々の流れ場において、流れや温度を可視化計測したり、流れの特性量を熱線風速計、LDV(レーザードップラー流速計)、PIV(粒子画像流速計)を利用して測定することにより熱流動構造の詳細を調べている。また、数値計算を用いてそれらの熱流動現象を予測し、実験値との比較を行って、現象を記述する計算モデルの開発を行っている。 現在行っている主な研究テーマは次の通りである。

1.長方形断面柱を置いた平行平板間流路の熱伝達

流れの中に角柱のような乱流促進体を置くことにより、伝熱促進が達成できることが多い。本研究は、角柱から周期的に放出されるカルマン渦に着目し、大きなスケールの渦が伝熱面に再付着することにより生じる伝熱促進のメカニズムを調べている。そのために、角柱の断面辺長比ならびにレイノルズ数を変化させた場合の熱伝達特性を調べ、フォトエッチングにより作成した薄膜熱流束センサーを用いた非定常熱伝達測定やスモークワイヤー法による流れの可視化を行っている。また、LDVとPIVによる流れの乱流特性量の時間平均および位相平均測定や乱流モデルを用いた速度場と温度場の数値シミュレーションを行っている。

2.水平ならびに傾斜した同軸二重円管内の自然対流

密閉した容器内の自然対流は、例えば原子炉の使用済み燃料の輸送や保存の際に重要となる。本研究では、円管の軸を水平から鉛直にまで傾斜させて、その熱伝達特性を測定するとともに、感温液晶を使用して温度場と速度場の同時可視化計測を行っている。速度場は感温液晶の粒子をトレーサーとし、PIVを用いて面的な測定を行っている。また、流れの3次元的構造を明らかにするために、3次元PIV測定法を開発している。

3.流体・構造熱的連成系における非定常熱伝達特性

原子力プラントなどの配管系統において、温度が異なる流体が合流するT字形合流配管部では、流体混合による不規則な温度ゆらぎが生じるため、構造材の熱疲労に注意する必要がある。サーマルストライピングと呼ばれる本現象では、流体と構造物とを熱伝達で連結した動的システムとして捉えることが重要である。本研究では、流体温度に低周波数のゆらぎがある場合の非定常熱伝達測定を薄膜熱流束センサーを用いて行い、熱伝達特性に対する流体温度ゆらぎの周波数依存性を実験的に調べている。

4.旋回を伴う壁面衝突噴流の熱伝達

衝突噴流は、噴流の衝突領域において高い熱伝達率が得られるため、工業製品の製作過程や、機器の運用時の加熱・冷却において、しばしば利用される重要な伝熱現象の一つである。しかし、衝突噴流においては、噴流の衝突領域から少し離れると局所熱伝達率が急激に低下するため、その領域での伝熱促進手法の開発が望まれている。本研究では、軸対称噴流に注目し、これに旋回を与えることにより、衝突領域から離れた領域で生じる熱伝達率の低下を補うことができるか否かを調べている。特に、衝突板上の局所熱伝達率分布を感温液晶により計測し、その伝熱機構を調べるために複雑な乱流場における特性量を3次元LDVシステムおよび3次元PIVシステムにより計測している。

5.3次元バックステップ流れの熱伝達

はく離と再付着を伴う流れは、原子炉、ガスタービン、電子機器、伝熱装置など多くの装置で認められ、それらの性能をしばしば左右する流れ現象である。本研究で取り上げるバックステップ流れは、はく離と再付着を伴う流れを実現する最も基礎的なものであり、これまでにも基礎的な研究が数多く行われてきた。しかし、これまでの研究では流れを2次元として捉えることが多く、実際の系で認められる側壁がある場合の3次元流れに対する基礎的知見の蓄積は殆ど無い状況である。本研究では、側壁を有する3次元バックステップ流れの局所熱伝達率を感温液晶を利用して測定するとともに、流動構造の詳細を可視化やLDV及びPIVにより測定している。また、有限体積法に基づいた3次元数値シミュレーションを適用して、現象の解明を行っている。

6.3次元リブ付設流路の熱伝達

ガスタービンを用いたコンバインドサイクルにおいては、ガスタービンの限界を追求した開発が推進されている。その際、高温化によるサイクル上のメリットを損なわぬよう、冷却空気量の少ないタービン翼の開発が技術的に重要である。動翼では乱流促進リブを配したリターンフロー型冷却構造が開発され、主流に直交する2次元乱流促進リブが多用されている。しかし、2次元リブにおいてはリブの後流に循環流が生じ、局所的に熱伝達率が低下する。本研究では、3次元孤立リブを導入することにより、3次元的な乱流構造を発生させ、それにより伝熱特性が改善されるか否かについて検討している。リブ下流での局所熱伝達率を感温液晶を利用して測定するとともに、流れ構造を流れの可視化やPIVにより測定している。

7.高効率フィン付き熱交換器の開発

空調機における管内冷媒と外部空気流の熱交換のように、液体-気体間で熱エネルギーの授受を行わせる熱交換過程では、気体側の熱伝達率は液体側のそれよりかなり小さい。このため、熱交換器の伝熱特性を向上させるには、気体側の伝熱促進と伝熱面積の拡大を図ることが重要であり、フィン(拡大伝熱面)の利用は必須となっている。本研究では、このようなフィン付き管の高性能化に資することを目的として、フィン付き管周りの熱流動の局所的な基礎特性の解明を目指している。特に、中間レイノルズ数領域では、伝熱管から周期的なカルマン渦列が放出される。その渦列の発生がフィンとどのように干渉して、いかなる流れが形成されるか、それがフィン面の熱伝達にどのように影響するかについて、流れの可視化やPIVによる流れ場の定量的測定、感温液晶によるフィン面温度分布測定を行って検討している。

8.マイクロスケール流路における熱伝達

工業製品の小型化に対応して、最近ではミリスケールの伝熱構成機器が実用化されている。熱伝達を利用した熱交換は熱源に近い位置で行うことが望ましいので、流路の小型化は高効率熱交換のための一方策となり得る。しかし、流路がさらに小さくなる、すなわちマイクロスケール流路になると流体は連続体として見なせなくなる。熱流動を記述する支配方程式に適用係数と称する修正を施す試みがあるものの、有効性に対する検討や工学的蓄積が殆ど無い。本研究では、かかる領域での基礎的知見を得ることを目的として、直径が数ミクロン〜数十ミクロン程度の円管内マイクロ流路における気体の摩擦係数と熱伝達率の測定ならびに水を用いてLIF(レーザ誘起蛍光法)による流路内の温度分布の測定を行っている。また、モンテカルロ直接法を用いた数値解析手法を適用して、現象の数値的予測を試みている。

9.高性能再生熱交換器の開発

小型分散電源の一つとして注目されているマイクロガスタービンにおいては、機器の小型化とともに生じる機関熱効率の低下が懸念されている。熱効率を引き上げるキーポイントはタービンからの排出ガスに含まれる熱を徹底的に利用することにあり、特に、その熱を十分に使って燃焼器入口ガス温度を上げることが重要である。本研究では、この役割を果たす再生熱交換器の高性能化を目指して、熱交換要素として網状物質や多孔質体を熱交換器流路内に挿入する場合に注目し、熱伝達に加えて熱伝導によっても生じる熱交換量を計測し、要素の有効性を実験的に調べている。データ取得にあたっては、直交流タイプの熱交換流路を使用した定常測定法と、テスト部にパルス状の温度履歴を与えてその応答特性を利用した非定常法の両者を行って、データの信頼性を確保している。

10.円柱の回転による渦放出制御

物体後流にはカルマン渦列と呼ばれる非定常な渦列が発生する場合がある。この渦列は物体にかかる流体抵抗を増大させる主要因となるいっぽう、渦列の巻込みが流体混合を促進するため、伝熱工学分野では熱交換-運動量交換の促進手法として注目されるとともに、その原理・特性を活かした速度計、流量計が開発されるに至っている。カルマン渦列はある条件下で不可避的かつ安定的に発生する。しかし、例えば物体周りの流れを人為的に変更することにより、もし渦放出が抑制できれば、より小さな流動抵抗で静かな機器の開発につなげることが可能となる。いっぽう、もし渦放出が強化できればより有効な伝熱促進を得ることができる。本研究では、物体の代表例として円柱に注目し、ステッピングモーターを利用して様々な回転を与える場合の可視化実験と熱伝達率の測定を行って、渦放出の有無や、周りの流れ場様子を整理している。そして、渦放出の抑制と強化が実現できるか否か、できるとすればどのような機構により生じるかを調べている。

11.ガスエンジン・コージェネレーションシステム

近年、エンジンやタービンなどの熱機関から出る排熱を回収し、電力と熱を同時に供給できるコージェネレーション(熱電供給)が注目されている。コージェネレーションシステムでは、排熱を二次エネルギーとして利用することによって燃料の節約や温暖化ガスである二酸化炭素の排出を削減できることから、地球環境保全の立場からも有効な省エネルギー設備といえる。同志社大学エネルギー変換研究センター(光喜館)にはガスエンジンと吸収式冷凍機からなるコージェネレーションシステムが導入されている。本研究ではコージェネレーションシステムの各要素機器の入口、出口における冷、温水の温度と流量を測定して、省エネルギー効果と環境負荷低減効果を評価するとともに、システムの最適化の研究を行なっている。