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人間環境研究室

教員

赤尾 聡史(教授)Satoshi AKAO

DB

研究分野 環境衛生工学
研究室 KE-311
TEL 0774-65-6578
FAX 0774-65-6578
E-mail sakao@mail.doshisha.ac.jp

研究内容

赤尾先生画像1 (121009)

人間環境研究室では主に、生活から生じる廃水(下水など)や有機性の廃棄物(下水汚泥、生ごみ、農業残渣など)の処理と利用に関する研究を行っています。従来は、適正処理がこの分野の中心的課題でしたが、例えば世界には下水処理水を飲用利用している地域があるとおり、従来の発想を超えた循環に関する技術開発、評価手法の開発、それら技術を統括するシステム開発が活発化しています。本研究室では、廃水・廃棄物に含まれる物質量を把握し、一方で、ある想定する地域における対象物質の需要量に基づき、地域社会活動全体における廃水・廃棄物処理技術・システムの位置づけを再認識します。人口減少などの社会情勢、ライフスタイルやニーズの変化を考慮し、資源化など付加価値を伴う。また、社会の持続的発展に貢献できる廃水・廃棄物処理技術・システム開発を行います。

主な研究テーマ

1.下水道資源の有効活用

水処理は、求められる品質(水質)に応じて水から水以外の物質を除く作業です。水から取り除かれた物質は、汚泥と呼ばれる固形物として廃棄されます。下水道の資源として挙げられるものとして、まずこの汚泥があります。有機物から無機物、場合によっては貴金属まで含まれています。その他、処理水自体も資源であり、下水と大気との間の温度差も利用される場合があります。下水道資源の有効活用法は種々ありますが。本研究室で行っている研究の例を以下に記します。

下水汚泥堆肥の施用効果:土壌の細菌群に与える影響

現在、政府の方針として、下水汚泥の肥料利用が進められています。そのような中で、下水汚泥の肥料利用の先進地域として北海道岩見沢市がしばしば取り上げられます。人間環境研究室では、2017年度より岩見沢市をたびたび訪問し、意見交換を行ってきました。また、下水汚泥肥料の評価を行ってきました。堆肥としての実際の効果は農家の方々が判断されるものですが、本研究室では、下水汚泥肥料が施用された際の土壌に与える生物・化学的な影響の調査を行ってきました。

赤尾先生画像2 (121010)

細菌群集の機能予測解析(横軸:サンプル、縦軸:機能)

赤尾先生画像3 (121011)

圃場調査の様子

赤尾先生画像4 (121012) ヘマトコッカスの培養と赤いヘマトコッカス

下水処理水に含まれる栄養塩の利用:微細藻類の培養と高付加価値物の生産 

通常の下水処理水中には、例えば、全窒素濃度で15 mg-N/Lなど、栄養塩が存在します。河川や湖沼の環境水と比べると、10倍以上の栄養塩濃度を含みます。近年は、このような処理水を、肥料成分を含む水として農業利用される事例もあります。ここでは、処理水に含まれる栄養塩を利用して微細藻類を培養し、処理水からのさらなる栄養塩除去(硝酸態窒素やリン酸態リンは容易にゼロ付近となります)と高付加価値物生産(アスタキサンチンなどのカロテノイドを想定)を目指しています。なお、処理水中の栄養塩濃度をできるだけ小さくした処理(水)は高度処理(水)と呼ばれ、放流先が閉鎖性水域など富栄養化が問題となる地域で採用されます。

2.有機性廃棄物の有効活用

下水処理過程で生じる下水汚泥や生活を通じて排出される生ごみ(一般廃棄物)のほか、農業残渣(植物非可食部)の有効活用を検討しています。下水汚泥は、先に挙げた堆肥化のほか、メタン発酵に持って行ってエネルギー変換される使い方も多いです。これは有機性廃棄物全般に有効な方法ですが、有機性廃棄物それぞれには個性・特徴があります。例えば、有機性廃棄物中には有用な成分を含む場合もあり、このような成分やバイオマスの構成要素を段階的に回収・利用し、最終的にメタン発酵で利用する、カスケード利用も検討されます。

赤尾先生画像5 (121013)

ナス残渣を用いたコマツナ栽培

農業残渣(植物非可食部)の有機培地化

近年、施設園芸は土耕から培地作付けに代わりつつあります。その中でも、ヤシガラがパックされている有機培地の利用が増加しています。一方で、ヤシガラは、バイオマス発電の燃料としても需要が伸びていることから、ヤシガラを代替できる有機培地の検討も一部で行われています。人間環境研究室では、利用しにくい農業残渣(植物非可食部)から有機培地を作成することを検討しています。施設園芸から排出される農業残渣を用いて有機培地を作成し、再び施設園芸(地元)で利用する、繰り返し使用した後はメタン発酵に利用する、ストーリーを描いています。ここでのバイオマス利用のポイントは、植物のベースとなる素材(セルロースなど)をそのまま利用することにあります。かつてありましたバイオエタノール化の対極にあります。

赤尾先生画像6 (121014) 低分子キトサンの作成と低分子キトサンを用いたL-乳酸発酵

水溶性キトサンの製造と利用

キトサンは、キチンを脱アセチル化することで生産されます。キチンはセルロースに次ぐ賦存量を誇る多糖であり、そこから生産されるキトサンは、条件にも拠りますが水溶性を示すユニークな多糖です。またキトサンは、抗菌性やキレート効果など、特異な物性を示すことからその利用が従来模索されています。キチン・キトサンはカニの甲羅から生産される工業生産物であり、廃棄物ではありません。しかし、キチン・キトサンの需要量が低下すれば、結果としてカニ殻の廃棄量が増加します。せっかくの有用な天然多糖を活用すべく、人間環境研究室ではキトサンの用途開発を行っております。例えば、キトサンの水溶性を高めるべく分子量を数万Da程度に加水分解するプロセスの効率化(低分子キトサン)を行っています。低分子キトサンはより水溶性が増し、その抗菌性を発揮できる場面が増加します。また、生成した低分子キトサンを用いた乳酸発酵-乳酸精製プロセスの開発を行っています。

3.地域持続性の向上を目的とするバイオマスなど地域資源の利活用策の検討

赤尾先生画像7 (121016)

バイオマスなど地域資源の利活用策を地域持続性の観点から設計・評価します。例えば、想定する利活用事業の収入・支出をヒアリングなどで用意します。次に、支出に相当する部分を新たな地域に対する需要と考え、これより波及する経済効果を求めます。想定される事業が実施されることにより増加する地域全体の付加価値額を用いて当該事業の評価を行います。産業連関表は、例えば、環境省から領布される市町村単位の産業連関表(地域経済循環分析用データ)を用いています。